少し衝撃的な話から始めますね。
飲食店経営者の約8割が「売上目標は持っているが、利益目標を数字で持っていない」という実態があります(繁盛店研究所・会員実態調査より)。
これ、すごく大事な話なんですよ。
売上が上がっても、利益が残らなければ経営は苦しいまま。毎日朝から晩まで一生懸命働いているのに、年末に決算書を開くと「あれ、こんなもんか…」となる。そのジレンマを抱えている方、本当に多いんです。
原因はシンプルです。「欲しい利益」から逆算せず、なんとなく「去年より売上を増やそう」という方向で動いているから。
今回は、欲しい利益を起点にした目標設定を5つのステップで整理します。静岡市清水区を拠点に、全国1,000店舗以上の繁盛を支援してきた現場から、実際に効果があったやり方をお伝えしますね。
📋 この記事でわかること
- なぜ「売上目標」ではなく「利益目標」から逆算すべきなのか
- 売上を客単価・客数・来店頻度に分解する考え方と着手順序
- 翌月5日ルールで販促計画を月次で軌道修正する方法
- 中華料理店が実践したPOP・メニューブック改善の具体的なアプローチ
こんな方におすすめ
- ✅ 頑張っているのに利益が残らず、決算のたびにがっかりしている方
- ✅ 売上目標は立てているが、利益目標を数字で設定したことがない方
- ✅ 集客に力を入れているのに、手元にお金が増えている実感がない方
- ✅ 客単価・客数・来店頻度のどこから手をつければいいか迷っている方
- ✅ 販促をやってはいるが、効果検証と改善のサイクルが回せていない方

なぜ「売上目標」から始めると利益が残らないのか
多くの店舗経営者が「今年は売上〇〇円を目指す」という目標を立てます。これ自体は悪くないんですが、問題は売上から考えているという点なんですよ。
売上を上げようとすると、どうしても「もっとお客さんを集めよう」「広告を打とう」という発想になりがちです。でも広告費が増えれば、その分だけ利益は削れる。集客コストをかけても、利益構造が変わっていなければ、忙しくなるほど手元にお金が減っていくという矛盾が生まれます。
本当に大切なのは「今年、自分はいくら手元に残したいのか」という問いから始めることです。
「売上は目的地じゃないんですよ。手段なんです。欲しいのは利益ですよね。だから順番が逆になっている経営者が本当に多い。目的地を決めてから地図を広げる、それだけで経営の景色がガラッと変わります。」
ハワードジョイマン(有限会社繁盛店研究所 代表取締役・中小企業診断士)
目標設定の5ステップ:欲しい利益から逆算する
目標設定 STEP 1
「欲しい年収(手取り)」を具体的な数字で書き出す
最初にやることは、難しい計算ではなく「自分は1年間でいくら手元に残したいか」を正直に書くことです。生活費・家族への投資・旅行・貯金・老後の備え…全部ひっくるめて、年間いくら必要かを出してみてください。たとえば「年間800万円は確保したい」なら、そこが出発点になります。
⚠️ よくある失敗:「そんな大きい数字、現実的じゃないから…」と最初から遠慮して小さな数字を書いてしまう。遠慮は後で考えること。まず理想を書くのがポイントです。
目標設定 STEP 2
欲しい利益から「必要な売上」を逆算する
欲しい年収が決まったら、それを実現するために必要な売上を計算します。飲食店なら原価・人件費・家賃などの経費率を踏まえて、「この利益を残すには、売上がいくら必要か」を出していきます。目安として、飲食店の場合は原価30%・人件費30%・家賃10%・営業利益10%という構造を頭に置いておくと計算しやすいです。逆算することで「目標売上」が初めて意味のある数字になるんですよ。
⚠️ よくある失敗:経費の把握が甘いまま計算すると、後で「あれ、この売上を達成しても全然利益が残らない」となります。現状の経費率を先に整理しておくことが大切です。
目標設定 STEP 3
売上を「客単価 × 客数 × 来店頻度」に分解する
必要な売上が出たら、それをひとかたまりで追いかけるのをやめてください。売上を3つの要素に分解するんです。
- 客単価:1回の来店でいくら使ってもらっているか
- 客数:何人来ているか
- 来店頻度:1人のお客さんが年間何回来ているか
この3つのどれかを上げれば売上は上がります。でも、どこから手をつけるかで、かかる労力も費用もまったく違うんですよ。
⚠️ よくある失敗:最初から新規客を増やそうと広告に投資する。実は客単価と来店頻度の改善のほうが、少ないコストで確実に利益につながります。
目標設定 STEP 4
着手順序を決める:客単価 → 来店頻度 → 新規集客
分解したら、着手する順番が重要です。正しい順番はこうです。
①まず客単価を上げる──店内にいるお客さんに、もう少し喜んでいただく工夫をする。POPやメニューブックの改善が代表的な手段です。
②次に来店頻度を上げる──一度来てくれたお客さんに、また来てもらう仕組みを作る。LINE・ハガキ・DM・ニュースレターなどを活用します。
③最後に新規集客──客単価と来店頻度の仕組みが整ってから、新しいお客さんを呼ぶ。この順番でやると、広告費の無駄打ちがなくなります。
⚠️ よくある失敗:この逆順でやる人がとても多い。新規客を集めることに全力を使い、既存のお客さんへのフォローがゼロになる。穴の空いたバケツに水を注ぎ続ける状態になってしまいます。
目標設定 STEP 5
「翌月5日ルール」で月次の軌道修正をする
計画を立てたら、月ごとに必ず確認する仕組みを作ってください。おすすめは「翌月5日ルール」です。毎月5日までに前月の売上・利益・客数・客単価を把握して、計画との差を確認する。ズレていたら翌月の販促計画を修正する。これを繰り返すだけで、年間を通じて目標に近づいていくことができます。
⚠️ よくある失敗:半年後・年末になってから「あれ、全然数字が合わない」と気づくパターン。気づいた時にはもう時間が残っていないことが多い。月次の確認が生命線です。
✓ ここまでのポイント
- 「欲しい利益」から逆算することで、初めて売上目標に意味が生まれる
- 売上は客単価・客数・来店頻度に分解し、着手順序は「客単価 → 来店頻度 → 新規集客」の順が最も効率的
- 翌月5日ルールで月次確認・修正を繰り返すことが、年間目標達成の鍵になる
客単価アップの具体例:POP・メニューブック改善でできること
「客単価を上げよう」と言うと、値上げをイメージする方が多いんですが、それだけじゃないんですよ。
たとえば、メニューブックに写真を入れる、料理の説明を変える、セットやプラスワンメニューを見せる場所を工夫する。こういったことで、お客さんが自然に「これも頼んでみようかな」と感じるようになります。
POPも同じです。「おすすめ」と書いてあるだけのPOPと、「このデザートは地元産の苺を使った季節限定品です。今月だけの一品です」と書いてあるPOPでは、お客さんの反応がまったく違います。見た目と言葉で違いを作る、これがポイントです。
「POPとメニューブックを改善したことで客単価が5%アップし、売上が過去最高を達成しました。たったそれだけか、と思うかもしれませんが、利益ベースで見ると体感はまったく違いました。」
中華料理店オーナー(増益繁盛クラブ会員)
この中華料理店の方が実践したのは、特別な広告でも大きな設備投資でもありません。メニューブックのレイアウトを見直して、収益商品を目が行きやすい場所に移動させて、POPで「なぜこれが美味しいか」を言葉にしただけです。
客単価5%というと小さく聞こえますが、月商300万円の店舗なら月15万円、年間180万円の差になります。これを広告費ゼロで実現できるということですね。
❌ よくあるパターン:メニューを増やすことで単価アップを図る
- メニューが多くなるほど仕込みが増え、原価率と人件費率が上がる
- お客さんが迷って注文に時間がかかり、回転率が落ちる
- 結果として売上は横ばいでも利益は減る、という逆効果になりやすい
✅ 推奨アプローチ:収益商品を「見える場所」に置く工夫をする
- メニュー数を絞りながら、高収益なメニューをメニューブックの目立つ位置に配置する
- POPで「なぜこれを頼むと嬉しいか」をお客さん目線で説明する
- 集客商品(入口価格)は据え置き、収益商品だけに工夫を集中させる
再来店対策で来店頻度を上げる:ハガキ・LINEの活用
客単価の仕組みが整ったら、次は「また来てもらう」ための手を打ちます。
新規のお客さんを1人集めるコストと、既存のお客さんにもう一度来てもらうコストを比べたことはありますか?一般的に、新規客の獲得コストは既存客の再来店コストの5倍以上と言われています(いわゆる「1:5の法則」として広く知られた考え方です)。つまり、既存客に来てもらうほうが、圧倒的に費用対効果が高いんです。
具体的な手段としておすすめなのは、ハガキとLINEの組み合わせです。
ハガキは、来店後2週間〜1ヶ月以内に手書きのメッセージを添えて送ると、驚くほど再来店につながります。ある飲食店の会員さんは、ハガキによる再来店対策だけで平均来店間隔が2ヶ月に1回まで短縮し、月4回ペースで来てくれるお客さんが続出した、という成果を出されました。
LINEは登録してもらったお客さんに、月1〜2回の頻度で季節のメニュー情報やお得な情報を届けるのに使います。ここで大切なのは「売り込みにならない」こと。お客さんにとって「また読みたい」と思われる情報を届け続けることが、長期的な関係につながります。
まとめ:計画と行動を一致させれば、利益は必ず残せる
今回の5ステップをもう一度整理します。
- 欲しい年収(手取り)を具体的な数字で書き出す
- 欲しい利益から「必要な売上」を逆算する
- 売上を「客単価 × 客数 × 来店頻度」に分解する
- 着手順序は「客単価 → 来店頻度 → 新規集客」の順番で動く
- 翌月5日ルールで月次の軌道修正を繰り返す
「売上より利益を重視する」という言葉、聞いたことがある方も多いと思います。でも実際に利益を残せる経営者とそうでない経営者の差は、この逆算の設計ができているかどうかだと、20年・1,000店舗以上の支援を通じて感じています。
目標は立てたら終わりじゃないんですよ。毎月5日に数字を確認して、ズレていたら修正する。その繰り返しが、年末の決算書を笑顔で見られる経営につながっていきます。
「何から始めればいいかわからない」という方は、まずメニューブックとPOPを見直すところから動いてみてください。それだけで客単価が変わり、利益が残る体質に近づいていきます。ぜひ、今日の記事の内容を手元にメモして、一つでも実践してみてください。
より体系的に「欲しい利益から逆算する販促計画」を学びたい方には、こちらの教科書が役に立ちます。
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