朝10時に仕込みを始めて、気がつけば深夜12時を過ぎている。翌日の予約確認、仕入れの電話、スタッフへの指示、レジ締め、掃除……。「今日も経営のことを考える時間、1分もなかったな」と思いながら電気を消している——そんな毎日を送っていませんか?
実はこれ、特別なことでも珍しいことでもないんですよ。全国1,000店舗以上の飲食店・美容室を支援してきて感じるのは、「現場から抜けられない社長」の問題は、能力の問題でも根性の問題でもないということです。構造的な問題なんですね。だから、同じことを続けていても解決しない。
この記事では、社長業の時間の使い方の本質——つまり「何をやめて、何に時間を振り向けるか」という視点から、具体的なチェックポイントと実践の手順をお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 社長の時間が現場作業に奪われてしまう構造的な原因
- 「自分じゃないとできない」の思い込みを外す分解思考の使い方
- 時間の棚卸しから始める、経営集中環境の作り方
- 新規客と既存客で時間の使い方を変えるべき理由
こんな方におすすめ
- ✅ 毎日現場に立ち続けていて、経営について考える時間が取れていない方
- ✅ 「自分がいないとお店が回らない」状態から抜け出したい方
- ✅ 休日も頭の中が仕事のことでいっぱいになっている店主・オーナーの方
- ✅ 2店舗目・多店舗展開を視野に入れているが、今の自分では無理だと感じている方
- ✅ 仕組みをつくって、社長として本来の仕事をしたいと思っている方

社長の時間が現場に消えていく、本当の理由
「時間が足りない」と感じている社長さんにお聞きしたいのですが、1日のスケジュールをそのまま全部書き出したことはありますか?
やってみると分かるんですが、多くの社長さんの1日って、実は「社長じゃなくてもできる仕事」で埋まっているんですよ。仕込み、在庫確認、電話対応、クレーム処理、スタッフへの細かい声かけ……これ、本当に社長でないとできないことでしょうか。
問題は「忙しさ」ではなく、社長の仕事と現場の仕事が頭の中で分離できていないことなんです。社長の本来の仕事は「儲かる仕組みをつくること」です。現場の作業を自分でこなすことではありません。
この構造が変わらない限り、どれだけ頑張っても時間は増えません。そしてこれは「もっと頑張れ」という話ではなく、「やめることを先に決める」という話なんです。
「社長が現場で一番忙しそうにしているお店は、だいたい利益も薄い。社長の本来の仕事は汗をかくことじゃなくて、汗をかかなくてもお店が回る仕組みをつくることですよ。」
ハワードジョイマン(有限会社繁盛店研究所 代表取締役/中小企業診断士)
あなたの時間の使い方、今すぐチェックしてみてください
以下のチェックポイントを読みながら、自分に当てはまるかどうか確認してみてください。3つ以上当てはまったら、時間の使い方を根本から見直すタイミングです。
チェックポイント①:1日のスケジュールを書き出したことがない
「何となく忙しい」という感覚だけで動いていませんか?何にどれだけ時間を使っているかを可視化しないと、改善のしようがありません。まず1週間分、起きてから寝るまでの行動を15分単位で書き出してみてください。
✅ ポイント:書き出すと「あ、これ自分じゃなくてもよかったな」という仕事が必ず出てきます。その仕事が時間を返してくれる金鉱です。
チェックポイント②:「自分じゃないとできない」と思っている仕事が多い
「このだしの取り方は自分にしか分からない」「この接客のニュアンスは自分だけのもの」——そういう感覚、すごく分かります。ただ、その仕事を細かく分解してみてください。昆布を水に入れて何時間置く、火にかけて何度で止める、という工程に分けた瞬間、「あ、これは誰でもできるな」となることがほとんどなんです。
✅ ポイント:仕事は「分解思考」で考えること。全体を任せるのは難しくても、工程に分ければ任せられる部分が必ず出てきます。
チェックポイント③:新規のお客さんに多くの時間を使っている
初めて来たお客さんに丁寧に対応するのは大切です。でも、お金をかけることと時間をかけることは別の話なんですよ。新規集客はチラシ・ポータルサイト・広告といった仕組みに働いてもらえばいい。社長が時間をかけるべきは、すでに来てくれている既存のお客さん、VIPのお客さんとの関係を深めることです。
✅ ポイント:「新規客にはお金をかけてよい。既存客・VIP客には時間をかける。」このメリハリが、社長の時間を生み出す鍵です。
チェックポイント④:「やめること」を決めずに、新しいことを始めようとしている
SNSをやろう、LINE公式アカウントを整備しよう、新メニューを開発しよう——やりたいことが増えると、結局どれも中途半端になります。時間は有限です。何かを始める前に、まず「今やっていることのうち、何をやめるか」を決めてください。
✅ ポイント:「やることより、やめることを先に決める」。この順番を逆にしている限り、社長の時間は永遠に足りません。
チェックポイント⑤:経営のビジョンをスタッフに伝える機会がない
社長が最大の広告なんです。「なぜこのお店をやっているのか」「どんなお客さんに来てほしいのか」「3年後にどうなっていたいか」——これを言葉にして伝えることが、スタッフとの共通言語をつくり、組織をまとめる土台になります。現場作業に追われているうちは、この最も大切な仕事ができません。
✅ ポイント:社長の本来の仕事は「ビジョンを発信すること」。それが結果的に、スタッフが自走できる組織をつくります。
✓ ここまでのポイント
- 「忙しい」の正体は、社長の仕事と現場の仕事が分離できていない構造にある
- 「自分じゃないとできない」は思い込みであることが多く、仕事を分解すると任せられる部分が出てくる
- 新規客には仕組みでお金をかけ、既存客・VIP客には社長が時間をかける、というメリハリが重要
実際にどう変わったか——和食店オーナーの実例
静岡でのセミナーでお会いした50代の和食店の男性オーナーのケースをご紹介します。
この方、開業して20年以上、本当に誠実にお店を続けてきた方でした。料理の腕は確かで、常連のお客さんにも恵まれていた。でも「数字のことを考える暇もない」「スタッフに任せると不安で結局自分でやってしまう」という状態が長年続いていたんですね。
実践してもらったのはシンプルなことです。まず1週間のスケジュールを全部書き出してもらった。そうしたら、発注・仕込みの一部・レジ締め・メニューの印刷まで全部自分でやっていることが分かった。それを工程に分解して、スタッフに任せられる部分を少しずつ渡していきました。
「抱え込みグセ」という言葉がご本人の口から出たのが印象的でした。任せることへの不安が、結果的に自分の首を絞めていたんですね。
「月商80万円上乗せできたことより、経営に集中できる時間が増えたことの方が、正直うれしかったです。仕組みに任せることを覚えたら、抱え込みグセが減って、ようやく先のことを考えられるようになりました。」
和食店オーナー(男性・50代)|仕組み化で現場を任せられる時間が増え、月商80万円上乗せを実現
月商が80万円上乗せになったのは結果であって、変わったのは「時間の使い方」なんです。そこが変わると、経営の質が変わる。経営の質が変わると、数字が変わる。この順番が大事なんですよ。
社長が経営に集中できる時間を作るための3つのステップ
時間の使い方を変える STEP 1
1週間のスケジュールをそのまま書き出す
まずは現状の把握から始めます。頭の中で「だいたいこんな感じ」と思っているのではなく、実際に何をしているかを15分単位でメモしていく。この「見える化」をしないと、何を任せられるかが分からないので、改善が進みません。「書くだけでいいの?」と思うかもしれませんが、書くことで初めて客観視できるんです。
⚠️ よくある失敗:「面倒だから後で」と後回しにしてしまい、結局何も変わらないパターン。これは今日の夜から始めてください。
時間の使い方を変える STEP 2
仕事を分解して「任せられる部分」を見つける
書き出したスケジュールを見ながら、各作業を細かい工程に分解します。「仕込み」という大きなかたまりではなく、「野菜を切る・だしを取る・下味をつける」という工程単位で考える。工程に落とし込むと、「この部分だけなら任せられる」という箇所が必ず出てきます。最初の1つを任せるだけで、社長の時間が生まれ始めます。
⚠️ よくある失敗:全部まとめて任せようとして、うまくいかずに「やっぱり自分でやった方が早い」と戻ってしまうこと。最初は1工程だけ任せることから始めてください。
時間の使い方を変える STEP 3
「やめること」と「時間をかけること」を決める
生み出した時間を何に使うかを先に決めておかないと、また別の現場作業で埋まります。既存のVIPのお客さんへの手紙を書く時間、翌月の数字を前月5日に確認する時間、スタッフとのビジョン共有の時間——これを意図的にスケジュールに入れてください。そして同時に、「もうやめること」を1つ決める。この両方がセットで機能します。
⚠️ よくある失敗:「やめること」を決めないまま新しい取り組みを追加して、結局スケジュールがパンクするパターン。追加する前に、必ず1つ手放してください。
まとめ:社長業の時間の使い方は、「仕組みへの信頼」から始まる
「自分じゃないとできない」は思い込みであることが多い、という話をしてきましたが、これはスタッフを信頼していないということじゃないんですよ。仕事を分解して、任せられる形にして初めて「任せる」ができる、ということです。
社長の最大の仕事は、仕組みをつくること、そしてビジョンを発信することです。現場の手を動かすことではありません。今日から1週間、まずスケジュールを書き出すことだけ始めてみてください。それだけで、見えてくるものが必ずあります。
社長が経営に集中できる時間をつくることは、売上を追いかけることよりずっと大切です。なぜなら、そこから「仕組みに働いてもらう」経営が始まるからです。
もし「何から手をつければいいか分からない」「一人で考えていても限界を感じている」という方は、全国の飲食店・美容室オーナーと一緒に学べる場所があります。20年以上・全国1,000店舗以上の支援実績をもとに体系化したメソッドを、実践的に学べる環境です。
まずは販促や経営改善の考え方の全体像を掴みたい方は、こちらの資料が参考になります。
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「社長が経営に集中できる環境」は、努力でつくるものではなく、仕組みでつくるものです。その一歩を、ぜひ一緒に踏み出しましょう。