先日、鉄板居酒屋を営む40代の男性経営者の方からこんな相談をいただきました。
「ジョイマンさん、うちの店、毎月それなりに忙しいんですよ。でも月末になると手元に全然お金が残っていない。スタッフにも給料払って、仕入れも払って、家賃も払って…何が残るんだって感じで。もう何年もこれが続いてて、正直しんどいです」
このご相談、本当によく聞くんですよ。「忙しいのに儲からない」という状態。売上が立っているのに利益が残らない。この根っこには、原価率の管理ができていないことが大きく関係しています。
今回は、個人居酒屋の適正な原価率の目安と、売価を変えずに手元にお金を残す具体的な管理法についてお伝えします。
📋 この記事でわかること
- 個人居酒屋の業態別・適正原価率の目安(焼鳥・鉄板・海鮮・串カツなど)
- 「忙しいのに利益が残らない」の本当の原因
- 売価を変えずに原価率を下げる具体的な方法
- 集客商品と収益商品を分けて利益を積み上げる考え方
こんな方におすすめ
- ✅ 売上はそこそこあるのに、月末になるとお金が残らない居酒屋オーナーの方
- ✅ 原価率を何%に設定すればいいか迷っている方
- ✅ 値引きやサービスで集客してきたが、そろそろ限界を感じている方
- ✅ 仕入れや仕込みを頑張っているのに、利益が出ない理由が分からない方
- ✅ 「3・3・3・1の法則」を聞いたことはあるが、自店への落とし込み方がわからない方

「忙しいのに儲からない」は原価率の問題が9割
居酒屋経営でよくある勘違いが「売上を増やせば利益も増える」という思い込みです。でも実際には、売上が増えても原価率が高いまま、または割引や値引きで集客しているままでは、利益はほとんど増えません。むしろ、仕込みの量が増えてスタッフも疲弊して、結果的に残業も増える、というループにはまりやすい。
個人居酒屋の場合、業態によって適正な原価率の目安は変わりますが、大きな枠組みとして知っておいてほしいのが「3・3・3・1の法則」です。
- 食材原価:売上の30%以内
- 人件費:売上の30%以内
- 地代家賃:売上の10%以内
- 営業利益:10%以上
残りの20%が水道光熱費・消耗品・広告費などの経費に充てられるイメージです。この枠組みを意識せずに「なんとなく」経営していると、売上が上がっても利益が残らない状態が続きます。
ちなみに、業態ごとの原価率の目安はこんな感じです。
- 焼鳥居酒屋:25〜30%(仕込みで付加価値をつけやすい)
- 鉄板居酒屋:28〜33%(食材の種類が多く管理が難しい)
- 海鮮居酒屋:30〜35%(仕入れ価格の変動が大きい)
- 串カツ・串揚げ:22〜28%(揚げ物は原価を抑えやすい)
- ホルモン居酒屋:25〜30%(部位によって差が大きい)
「うちは海鮮が売りだから原価が高くなるのは仕方ない」と思っている経営者の方が多いですが、それは半分正解で半分は思い込みです。原価の高いメニューがあっても、利益率の高いメニューを組み合わせれば、全体の平均原価率をコントロールできます。これが大事なんですよ。
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値段を上げる前に、まず「売価を維持したまま原価率を下げる」工夫をする
「原価率を下げるには値段を上げるしかない」と考えがちですが、それは最後の手段です。まずやるべきことは、売価をそのままにして原価率を下げる工夫です。具体的には次のような方法があります。
チェックポイント①:メニューの構成を見直しているか
メニューの中に、原価率が40%を超えているものが複数ありませんか? そういったメニューが「人気メニュー」として注文を集めている場合、売れれば売れるほど利益が削れます。
✅ ポイント:原価率の高いメニューは「目玉の集客商品」と割り切り、そこで来たお客さんを利益率の高い「収益商品」に誘導する導線をメニューブックや卓上POPで設計すること。
チェックポイント②:ドリンクの原価率を把握しているか
飲食店の利益の柱はドリンクです。生ビール・ハイボール・サワーの原価率はおおむね15〜25%と低く抑えやすい。ここを厚くすることで、料理の原価率が多少高くても全体を調整できます。
✅ ポイント:ドリンクの追加注文を促すタイミング(最初の一杯が空いたら声をかける、おすすめドリンクをPOPで見せる)を仕組み化すると、客単価が自然に上がります。
チェックポイント③:「全品半額デー」「飲み放題付き割引コース」を常習的に使っていないか
割引で集客しているお店の多くが、原価率30%の食材を半額で出すことで実質原価率60%という状態に陥っています。これは「売れば売るほど赤字に近づく」構造です。
✅ ポイント:割引を使うなら、1万円以上の高単価コース・個室プランなど、元々の利益が十分に取れているメニューに限定する。「割引してでも来てほしいお客さん」を選ばないと、利益は残りません。
✓ ここまでのポイント
- 個人居酒屋の適正原価率は業態によって異なるが、3・3・3・1の法則を基準に全体のバランスを管理することが大切
- 値段を上げる前に、売価を維持したまま原価率を下げる工夫(メニュー構成・ドリンク戦略・割引の絞り込み)が先
- 割引集客は原価率を倍増させる危険な習慣。割引を使うなら高単価メニューに限定する
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「集客商品」と「収益商品」を分けて設計する
手元にお金を残すためのもう一つの考え方が、メニューを「集客商品」と「収益商品」の2種類に分けることです。
集客商品は、お客さんが「このお店に行こう」と思うきっかけになる看板メニューです。たとえば鉄板居酒屋なら「名物の鉄板餃子」「自家製ソースのおでん」など、原価がかかっても記憶に残るメニュー。これで来店動機をつくります。
一方、収益商品は利益率が高く、かつお客さんに喜んでもらえるもの。たとえば「オリジナルの漬けだれで食べる刺身盛り」「店主こだわりの日本酒3種飲み比べセット」など、価格に対してお客さんが価値を感じやすいもの。ここで利益を積み上げます。
入口(集客)と利益(収益)を切り分けて設計することで、安売りせずに利益が残る仕組みができます。この考え方を飲食店のFL比率(食材費と人件費の合計コスト比率)の管理と組み合わせると、さらに精度が上がりますよ。
「お客さんを集めることより、来てくれたお客さんに何を売るかを先に設計する。それが利益の残る店と残らない店の一番の違いなんですよ。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・店舗利益最大化コンサルタント)
実践した経営者が変わった話——鉄板居酒屋の事例
冒頭でご紹介した鉄板居酒屋の40代オーナーの方ですが、実はその後、原価率の見直しとメニュー設計の改善に取り組んでいただきました。
「月商が25%増えて、しかも閉店後の残業が短くなった。今は店に立つのが待ち遠しいくらいです。」
鉄板居酒屋オーナー(男性・40代)
月商が増えながら残業が減る。これは原価率の改善とメニュー設計の見直しによって、「無駄に多い仕込み」「利益の出ない注文への対応」が減ったことが大きな要因です。頑張る量を増やしたわけじゃなく、やることを絞って利益が出る流れに変えた。これが「頑張らない繁盛」の考え方ですね。
この方が取り組んだことは特別なことではありませんでした。
- 原価率の高いメニューを集客商品として位置づけ、そこから収益商品へ誘導するPOPを設置した
- 「飲み放題付き割引コース」を廃止し、個室利用の高単価コースに特典をつけた
- ドリンクの追加タイミングをスタッフと共有し、自然な声かけを習慣にした
どれも、今日から動けることばかりです。
「利益率80%の商品」という発想で、競争から抜け出す
さらに一歩進めると、「ノウハウや体験を売る」という考え方が出てきます。
たとえば、店主のこだわりの仕込み方法を活かした「マスター直伝の調理体験コース」や、「この食材のここが美味しい理由をお伝えしながら食べるペアリングコース」など、食材原価だけでなく知識・経験・コンセプトをセットにした商品設計です。
これをやると、食材原価が30%でも、コース全体の価値が上がって客単価が大幅にアップします。結果として、利益率が80%近い商品を作ることも可能です。
「そんなの自分の店には無理」と思うかもしれませんが、全国1,000店舗以上を支援してきた経験から言うと、どんな業態にも「語れるストーリー」はあります。それを商品に変えられるかどうかだけです。
「料理が美味しいのは大前提。でも繁盛しているお店は、美味しさをどう伝えて、どう買ってもらうかの設計がうまい。繁盛することが価値の証明なんですよ。」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・店舗利益最大化コンサルタント)
まとめ:原価率の管理は「数字」より「仕組み」で考える
個人居酒屋の適正原価率は、業態によって異なりますが、3・3・3・1の法則を基準に全体のバランスを管理することが基本です。そのうえで、
- 売価を変えずに原価率を下げる工夫を先に徹底する
- 集客商品と収益商品を分けてメニューを設計する
- 割引は高単価メニューだけに絞る
- ドリンクや付加価値商品で利益を厚くする
この4つを意識するだけで、売上を大きく増やさなくても手元に残るお金は確実に変わってきます。
「今の行動の結果が今の利益」です。数字を正しく見て、やることを絞って、仕組みに働いてもらう。それが個人居酒屋が長く繁盛し続けるための道だと、20年近くの支援経験から確信しています。
まず1つ、今日から動いてみてください。
「忙しいのに利益が残らない」を終わりにするための最初の一手は、原価率と利益の構造を正しく把握することです。増益繁盛クラブでは、鉄板居酒屋の月商25%増のような実践事例をもとに、あなたの業態に合った利益の残る仕組みを一緒につくっていきます。まずは入会案内ページで詳細を確認してみてください。