「新しい事業を始めたい」と思ったとき、何から考え始めていますか?
「儲かりそうか」「流行っているか」「自分がやりたいか」——そのあたりから考えてしまうと、あとで大きくつまずくことになります。実は、飲食店が新規事業を検討するとき、一番最初に問い直すべきは「今の店が自分なしで回るか」という問いなんですよ。
特に40〜50代の経営者の方から増えているのが、こんな相談です。
「そろそろ先のことを考えないといけないけど、自分が店を離れたら何も回らない。新しいことを始める前に何を整理すればいいのか、そもそも分からない」
この記事では、飲食店が新規事業を相談するとき——とりわけ後継者問題や事業承継を視野に入れているとき——に、最初に決めるべき3つの判断基準を丁寧にお伝えします。難しい言葉は使いません。「自分の店でも考えられる」と思える内容でお届けしますね。
📋 この記事でわかること
- なぜ「新規事業の前に事業承継の整理が必要」なのか、その理由
- 飲食店が新規事業を判断するときの3つの基準と、各基準でチェックすべきこと
- 「社長がいなくても回る仕組み」を作るための最初のステップ
- 4店舗展開・上場企業への売却といった出口戦略の現実的な描き方
こんな方におすすめ
- ✅ 自分が現場を抜けるとお店が回らず、新しいことに踏み出せない方
- ✅ 後継者がおらず、いつ引退するか・どう事業を引き継ぐか悩んでいる方
- ✅ 新規事業や多店舗展開を考えているが、何から手をつければいいか分からない方
- ✅ 売上はあるのに利益が手元に残らず、将来の出口が見えない方
- ✅ 「頑張り続ける経営」から抜け出して、仕組みで回るお店を作りたい方

なぜ「新規事業の前に」出口戦略を整理するのか
飲食店が新規事業を考えるとき、多くの経営者が「どんな業態にするか」「どこに出店するか」から考え始めます。でも、そこより先に整理しておくべきことがあるんですよ。
それは、「今の自分の店は、事業として価値がある形になっているか」という問いです。
少し厳しい言い方をすると、経営者の方が毎日現場に立ち続けて「自分がいないと何も決まらない」状態のお店は、事業として売ることも、人に任せることも、継いでもらうこともできません。新規事業を増やす前に、今の店が「仕組みとして動いているか」を確認することが、後継者問題の解決にも直結するんですよ。
「でも、仕組み化なんてまだ先の話では?」と思われるかもしれません。実はそれが一番の落とし穴で、多くの経営者が「もっと早く動けばよかった」と言います。新規事業の相談は、今のお店の出口戦略と一緒に考えることで、初めて意味を持ちます。
「新規事業の前に、まず今の店の仕組みを整えなければ」と感じ始めているところだと思います。ただ、お客さんの購買行動と販促の関係を整理しないまま動くと、仕組み化の方向がズレることがあります。電子書籍「顧客の購買行動を軸とした販促改善の教科書」では、お客さんの動きを軸に自店の販促を見直すための考え方を体系的にまとめています。メールアドレスを入力するだけで受け取れます。
判断基準①「今の店から社長の仕事を切り離せているか」
新規事業をやるかどうかの最初の判断基準は、「今の1店舗が自分なしで動けるか」です。
ここで確認してほしいのは、「誰でもできる作業」と「社長しかできない判断」を分けて考えるということです。
チェックポイント①:「社長がいないと止まる仕事」を書き出してみる
発注・シフト決め・クレーム対応・新メニューの決定……これらが全部「自分しかできない」になっていませんか?
✅ ポイント:まず1週間、自分がやっている仕事を全部書き出してください。そのうち「これ、スタッフに渡せる」ものから順番に標準化していく。これが仕組み化の第一歩です。「全部引き継がせる」ではなく、「1つずつ渡していく」という感覚で始めるのが大切なんですよ。
チェックポイント②:「やり方を言語化している仕事」がどれだけあるか
スタッフに渡せる仕事でも、「見て覚えて」「自分でやって学んで」という状態では渡せていないのと同じです。
✅ ポイント:作業の手順を紙に書けるか、動画に撮れるか——そこまで落とし込んで初めて「標準化できている」と言えます。全部一度にやろうとすると続かないので、まず一番よくある作業1〜2つから始めてみてください。
この基準をクリアしていないうちに新規事業を始めると、社長が2倍3倍忙しくなるだけで、どの事業も中途半端になります。居酒屋の原価率改善を相談した店主の、再建3ステップの記録でも紹介していますが、「仕組みを作る前に広げた」失敗例は少なくありません。
判断基準②「新規事業が出口戦略と一致しているか」
2つ目の判断基準は、「その新規事業は、自分が描く出口(引退・売却・承継)と方向が合っているか」という点です。
新規事業を始める動機はさまざまですが、後継者問題を抱えている経営者の場合、「事業を売れる形にする」か「誰かに継いでもらえる形にする」か、どちらかを目標にするかによって、やるべき事業が大きく変わります。
❌ よくあるパターン:「なんとなく儲かりそうだから」で始める
- 今の店との相乗効果がなく、管理コストだけが増える
- 売上が増えても利益が手元に残らない状態が続く
- 社長がさらに忙しくなり、どちらの店も中途半端になる
✅ 推奨アプローチ:出口から逆算して事業構成を決める
- 「4店舗以上あれば上場企業の買取対象になり得る」という実態をふまえ、店舗数の目標を先に設定する
- 各店舗が「社長がいなくても動く仕組み」になっていることが前提
- 会社に利益を積み上げて「自分年金」として引退後の収入源にする設計を同時に進める
「新規事業を考える前に、まず今の店を"売れる資産"に変えることです。社長が毎日立たないと回らない店は、事業として価値がつかない。仕組みを作るのが先で、広げるのはその後でいい」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・店舗利益最大化コンサルタント)
✓ ここまでのポイント
- 新規事業の前に「今の店を社長なしで動かせるか」を確認することが先決
- 新規事業は「出口戦略(売却・承継・引退)」から逆算して選ぶと、方向性がブレない
- 社長しかできない仕事を書き出し、1つずつ標準化していくことが仕組み化の第一歩
「出口から逆算して動く」という考え方は分かった、でも「自分の店に当てはめたらどう動けばいいか」が一人では見えにくい、という状態になっていませんか。増益繁盛クラブでは、客単価の適正化・リピート設計・新規集客の順番を体系化した動画と月次セミナーに加え、24時間相談できるAIもご利用いただけます。初月980円のお試し体験から始められます。
判断基準③「利益が残る構造になっているか」
3つ目の判断基準は、「その新規事業で、利益が手元に残る構造を作れるか」です。
売上が増えても、利益が残らないなら意味がありません。特に飲食店は、事業を増やすほど人件費・家賃・仕入れが増えて、逆に利益率が下がるケースが多いんですよ。
新規事業を判断するときに使ってほしいのが、「欲しい利益から逆算する」という考え方です。「これをやったらいくら売れるか」ではなく、「自分が引退するまでに会社にいくら残したいか、そのために何年で何をやるか」という順序で考えるということです。
チェックポイント③:今の店の「利益の見える化」ができているか
新規事業を判断する前に、今の店の月次の利益をちゃんと把握していますか?売上は分かるけど、利益は税理士に聞かないと分からない——という状態では、新規事業の可否を判断できません。
✅ ポイント:翌月5日ルール(前月の数字を翌月5日までに把握する習慣)を今すぐ導入してください。利益の現状が分かれば、新規事業に回せる体力も判断できます。
チェックポイント④:後継者不在の地域の人気店を「引き継ぐ」という選択肢も視野に
自分で一から新規事業を立ち上げるだけが選択肢ではありません。後継者不在で廃業を考えている地域の人気店を、屋号ごと引き継ぐという方法もあります。すでにお客さんがいて、スタッフがいて、仕組みができている店を引き継ぐほうが、リスクが低く、利益が出るまでのスピードが早いケースも多いんですよ。
✅ ポイント:「地域の廃業予定店を探す」という視点で動き始めると、意外な出会いがあります。商工会や地域の同業者ネットワークに顔を出すところから始めてみてください。
「店に立つのが待ち遠しくなった、という感覚が出てきたとき、経営が変わり始めている証拠だと思うんです。売上より大切なのは、そういう感覚を持てる経営の状態を作ること」
ハワードジョイマン(中小企業診断士・店舗利益最大化コンサルタント)
「月商が25%増えたことより、閉店後の残業が減って、店に立つのが待ち遠しくなったことのほうが大きな変化でした」
鉄板居酒屋オーナー(40代・男性)
この方のケースも、最初にやったのは「新しい集客策」ではなく、「自分がやらなくていい仕事を整理すること」でした。その結果として月商が上がり、時間も気持ちも余裕が出てきた、という順序なんですよ。
3つの判断基準を整理したら、次に相談すべきこと
ここまで3つの判断基準をお伝えしてきました。整理すると、こういう順序になります。
新規事業を相談する前の確認 STEP 1
「社長しかできない仕事」を書き出して、1つずつ標準化を始める
まず現状把握です。今週1週間、自分が実際にやっている仕事をすべてメモしてください。それを見ながら「スタッフに渡せるもの」を選んで、手順を言語化する——これだけで仕組み化が始まります。
⚠️ よくある失敗:「全部一気にやろう」として何も進まないパターン。まず1つだけに絞ることが大切です。
新規事業を相談する前の確認 STEP 2
「自分が何年後にどういう状態になりたいか」を決める
引退後の収入をどうするか、事業を売るのか継がせるのか、それとも規模を縮小して続けるのか——これを先に決めないと、新規事業の方向も決まりません。「10年後の自分の状態」から逆算して、今やることを選んでください。
⚠️ よくある失敗:「まだ先の話」と先送りにして、動けるタイミングを逃すこと。
新規事業を相談する前の確認 STEP 3
今の店の利益構造を「見える化」する
月次の利益を把握できていない状態で、新規事業の投資判断はできません。翌月5日ルールを習慣にして、利益がどれだけ残っているかを毎月確認する。これが新規事業を「やる・やらない」の判断基準になります。
⚠️ よくある失敗:売上だけ見て「いけそう」と判断して動き出し、気づいたら利益がゼロになっているパターン。
新規事業や多店舗展開を相談するときは、この3ステップを踏んだ上で専門家に話を持っていくと、話がスムーズに進みます。飲食店のメニュー開発を相談できる専門家に密着した改善事例でも書いていますが、相談前に「今の自店の現状整理」ができているかどうかで、支援の質が大きく変わります。
また、資金面での不安がある場合は、飲食店の資金繰り相談で今すぐ動くべきタイミングも参考にしてみてください。新規事業の投資判断と資金計画は、セットで考えることをおすすめします。
まとめ:新規事業は「今の店の出口」と一緒に設計する
飲食店が新規事業を相談するとき、最初に決めるべき3つの判断基準をまとめます。
① 今の店から社長の仕事を切り離せているか
② 新規事業が出口戦略(売却・承継・引退)と一致しているか
③ 利益が残る構造を設計できているか
この3つが整っていないまま新規事業を始めると、「やること」だけが増えて、手元に残るものが何もない——という状態になりがちです。
「頑張らない繁盛」という言葉を私はよく使いますが、それは「努力しない」という意味ではありません。「仕組みに働いてもらう状態を作る」ということです。後継者問題も事業承継も、結局は「自分がいなくても動く仕組みを作れているかどうか」に尽きます。
全国1,000店舗以上の支援をしてきた経験から言えるのは、「もっと早く動けばよかった」と言う経営者は多くても、「動き出したことを後悔した」という経営者にはほとんど会ったことがない、ということです。
今日からの小さな一歩が、数年後の大きな違いを生みます。ぜひ、今の自分の店の現状を1つずつ整理するところから始めてみてください。
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